緑色植物は「エネルギー」「シグナル」として光を使いこなしている
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私は株式会社キーストーンテクノロジー社長を務める岡﨑聖一です。
今回のテーマは、緑色植物は「エネルギー」「シグナル」として光を使いこなして生きているという事です。
前回のコラムでも触れましたが、人工光型植物工場は、室内において人工光と水耕栽培を組合わせて植物を生産するシステムです。その際、植物生産に適した「環境制御」をどのように行うかが重要になります。特に光合成の主役である“光”を植物がどのように使いこなしているかが理解できなければ、事業として植物工場を経営することは非常に困難です。
地球で生まれた緑色植物は、太陽光を浴びることで光合成を行い、進化の歴史を辿って来ました。そのため、一般的に太陽光と同じ性質の光が必須と思われていますが、現実は必ずしもそうではないのです。電気代が無償で電力は使い放題という条件下では、疑似太陽光の照明が使われるかもしれません。しかしながら現実は、電力会社にkw/hあたり○○円の電気料金を支払い、電力を使用するので、限られた電気エネルギーを効率よく野菜等の植物生産に利用することが求められます。そこで大切なのが、植物は光をどのように利用しているかというメカニズムを理解して、「エネルギー利用効率」を追求することです。
前置きが長くなりましたが、先ずは地上の緑色植物光合成メカニズムを簡単に解説します。
光合成とは、光のエネルギーにより生 物が二酸化炭素を同化して有機化合物を生成する過程のことです。緑色植物の場合には、クロロフィルおよびカロテノイドの働きにより光のエネルギーを吸収し、6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6O2 + 6H2O の反応で、糖類、さらにこれから多糖類を生 成する過程につながります。光合成の過程は、光を必要とする明反応と必要としない暗反応とから成ります。前者は、光エネルギーの化学エネルギーへの転化で、アデノシン三リン酸 (ATP)の生成、光エネルギーによる還元型補酵素(NADP)の生成およびそれに伴う O2 の発生であり、後者は上に生じた ATPと NADPを用いて CO2 を有機化合物内に固定する反応です。
何やら小難しいですが、一言でいえば、二酸化炭素と水を使用して、「光合成に有効な波長」の光エネルギーを利用して、光合成色素が働いてデンプンをつくる反応です。光合成色素の代表選手葉緑体は、緑色植物の緑色部分の細胞に特有の構造体です。クロロフィル(葉緑素)を含んで緑色をなしています。クロロフィルに代表される光合成色素は、太陽光の全ての波長を等しく吸収するのではなく、主に赤色光と青色光を吸収します。以上が今回のテーマの一つである緑色植物は「エネルギーとして」光を利用しているという仕組みです。
参考:http://www.photosynthesis.jp/shikiso.html
次に、緑色植物は「シグナル」として光をどのように利用しているかを解説します。植物は「生活環」というライフサイクルに従って生きています。種子が発芽し(発芽期)、葉を沢山茂らせ(栄養成長期)、次世代を残すために花や実をつけ(生殖成長期)、生育環境の悪化に伴い枯れて次世代に養分を残す(老化期)という流れです。これらの生命活動は遺伝子によって支配されており、環境の変化に合わせて適切に環境応答するための遺伝子(プログラム)が発現していきます。その際遺伝子のスイッチを入れるものの一つに光があり、特定の波長を吸収する光受容体というものが光をシグナルとして感知します。エネルギーと異なるのは、強さというよりも感知可能レベル以上の強さの光「有or無」をモニターしているのです。一例をあげると、赤色LEDだけでレタスを育てると成長速度は速いですが、葉が薄くなり徒長します。一方青色LEDだけでレタスを育てると成長速度が赤色単体時より遅くなり、草丈が矮化して、葉が厚くなります。花の場合は、品種により光波長を変えることで開花時期を遅らせたり前進させることが出来ます。これらは光受容体が光をシグナルとして利用した反応です。
参考:https://jspp.org/hiroba/essay/nagatani.html
次回は、LEDの寿命というテーマについて話題提供したいと思います。