植物とストレスの関係(動けない植物の驚くべき生存戦略)- 前編
弊社ホームページをご覧いただきありがとうございます。
私は株式会社キーストーンテクノロジー社長を務める岡﨑聖一です。
今回のテーマは、植物とストレスの関係(動けない植物の驚くべき生存戦略)です。
冒頭、今回のテーマに沿った研究成果をご紹介したいと思います。
2018年6月28日に弊社ホームページにて「植物工場栽培のサニーレタスは旨み成分を多く含み、苦み成分が少ない ~栽培環境による味の特徴を明らかに~」というプレスリリースを紹介しました。
筑波大学、理化学研究所及び弊社の研究チームは、RGB(赤色、緑色、青色)LED独立制御型植物工場で栽培したサニーレタスが、まったく同じ組成の液体肥料を用いて土壌栽培したものと比較したときに、見た目の違いだけでなく味や機能性などに関連する代謝物群の生産に影響することを、統合メタボローム解析(一種の生物が作り出す全ての成分も解析)により世界で初めて明らかにしました。弊社植物工場で栽培したサニーレタスは、土壌栽培したものよりも旨味成分であるアミノ酸類を多く蓄積し、苦み成分であるセキステルペンラクトン類の蓄積は抑制されることも明らかとなりました。
詳しくは、下記リンクをご参照ください。
◆植物工場栽培のサニーレタスは旨み成分を多く含み、苦み成分が少ない | キーストーンテクノロジー
さて、それではコラムの本題に入りたいと思います。
現代社会を生きる私たちは「ストレス」と如何にうまく付き合って、心身共に健やかな状態を保つべきか苦労しています。ここで改めて「ストレス」という言葉について考えてみたいと思います。ストレスという用語は、もともと物理学の分野で使われていたもので、物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態を言います。ストレスを風船にたとえてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。医学や心理学の領域では、心や体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。
植物は私たちとは違い、自然環境下では太陽光をエネルギー源として、空気中の二酸化炭素と、根から吸い上げた単純な無機塩類(窒素塩、硫酸塩、リン酸塩など)を使い、光合成によって有機物を合成し、自分自身のからだを作って生きています。動かないという生存戦略を選択した植物は、生存を脅かす様々なストレスに襲われても動物のように逃げ出すわけにはいかないので、独自 の化学的な防御戦略を発達させました。
シグナルとして植物体が感じて作用する環境要因には、いずれも適切な強さ(大きさ、高さ、濃さ)があり、固着生活を営む植物は、しばしばその範囲を超えた環境に遭遇します。不適切な環境に置かれた時に生じる生理的な緊張状態をストレスと呼びます。
植物にとってのストレスとしてよく知られているのは、強光ストレス、低温ストレス、高温ストレス、乾燥ストレス、無機養分ストレスなどです。この他、土、公害ガス、病気、昆虫・動物・他の植物など植物は生育している環境や他の生物によるストレスによって作用します。植物は、このような環境要因の持つ情報をシグナルとして捉え、それにさまざまな形で応答します。シグナルは受容体または受容機構によって認識されます。受容されたシグナルは植物が利用できる形に変換され、反応の部位に伝達されます。そしてそこで反応を引き起こします。シグナルの変換・伝達過程では多くの場合植物ホルモンが関与しています。植物ホルモンは、いつかコラムの話題として詳しく記すつもりです。話を戻します。植物は、光合成機能維持のために、分子レベルから個体レベルまで多様なストレス応答を行っています。
普段より長くなってしまいましたね。
具体的な植物のストレス応答については、次回ご紹介します。