LEDの寿命(放熱設計の重要性) - 後編
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私は株式会社キーストーンテクノロジー社長を務める岡﨑聖一です。
今回のテーマは、前回に引き続きLEDの寿命(放熱設計の重要性)です。
後半の最初は、LED熱設計上の難点を纏めてみます。
- 低消費電力だが、赤外放射がない分を熱エネルギーとして放出する。
- 素子が固体で覆われているため、放熱性は、その固体の熱伝導率に左右される。
- 部品(チップ)表面積が小さいため、伝導・対流・放射面積が小さい。
- 部品(チップ)表面に放熱部材が取り付けられない。
白熱電球や蛍光灯は金属やガラスという耐熱性の高い材料で構成されているため、温度が高くなっても十分機能を満足できますが、LEDは温度が高くなると輝度や寿命が低下してしまいます。そのため、LEDが発する熱を如何に素早く外部に放出するかという事が技術的課題になるのです。
市販されている多くのLEDランプは、「空冷式」の構造になっています。ランプから生じる熱を周囲の空気分子に受け渡すのですが、この時少しでも多くの空気分子に確率的に遭遇できるように、ランプのケースには“恐竜の背中”のようなヒートシンクという構造体が組込まれていて、放熱する表面積を増やす工夫がされています。
一般照明の用途であれば主に暗い時間帯に点灯するので、ランプの稼働時間は限られます。しかし、多段式の栽培棚に多くの植物が密集して植えられている人工光型植物工場の栽培用LEDは毎日16時間程度点灯しており、ランプ周囲の気流速度が低いため、「空冷式」では十分な放熱効果が得られません。
そこで私が試行錯誤の末に開発に成功したのが「水冷式」RGB(赤緑青)植物栽培用LED照明システムです。大型のRGB(赤緑青)LEDパッケージを金属ベース基板に実装し、水冷管を内蔵した特別なヒートシンクに取り付け、水冷管内に冷却水(水道水)を循環させます。LEDから生じる熱は、水冷管内の冷却水により素早くLEDライトの外部に移動させることが出来ます。冷却水が漏れたりすれば危ういですが、きちんとメンテナンスしていれば一般的な植物工場で利用されている疑似白色LEDランプの寿命よりはるかに長寿命になります。寿命の具体的な時間数は企業秘密です!
人工光植物工場用のLEDランプは、一般的にコスト最優先で選定されます。しかし、本当にそれで正しいのでしょうか?放熱設計の稚拙なランプはコストが安価でも寿命は短いものがほとんどです。水耕栽培棚は償却期間がLEDランプ寿命よりはるかに長いため、寿命の短いLEDランプは数年おきに交換することになります。その際、新しいLEDランプコストに加えて取り付け工賃が別途かかります。
人工光型植物工場において、野菜生産の主役である光合成のエンジンとしてLEDランプはとても重要な存在です。目先のコストに眩惑されることなく、優れた放熱設計により製品化された長寿命なLEDランプを選んで頂きたいものです。
次回は、植物とストレスの関係というテーマについて話題提供したいと思います。